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●時は1949年、ロストロポーヴィチ(チェリスト、1927年〜)とオイストラフ(ヴァイオリニスト、1908年〜1974年)はフィンランドに演奏旅行に出ました。
このときロストロポーヴィチ22歳、オイストラフ41歳。
この訪問で、二人は作曲家シベリウス(1865年〜1957年)の自宅に招待を受けました。
二人はシベリウスの家に来て行く服を作りに街に出、洋服屋に入りました。
そこの主人はびっくりする程美しい女性で、その人が二人の寸法を測りました。
ロストロポーヴィチは「彼女がズボンの寸法を取る時など、本当に身の置きどころもない程緊張した。何しろ若かったからね、そのフィンランド女性の名前は今でも覚えている。」と青春の一幕を語ったことがあります。
寸法取りが終わって二人は美しい女性店主を翌日のコンサートに招待しました。
その日楽屋には3本のバラが届けられた。
問題は、オイストラフがシベリウスのヴァイオリン協奏曲を演奏している時に起こった。
オーケストラはフィンランドラジオの交響楽団で、演奏会はラジオで中継放送されていた。
第一楽章、第二楽章をオイストラフは見事に演奏した。
事は第三楽章に入って起こった。オイストラフが途中からいきなり曲の終わりに飛んでしまったのだ。
生放送中です。
オイストラフとオーケストラがなんとかさぐりあいをしてようやく元に戻り、演奏会を終えた。
ロストロポーヴィチは楽屋で放送を聴いていた。
シベリウスもおそらく聴いているだろう。「とんでもないことになった。」と心配した。
ロストロポーヴィチはオイストラフにいたく同情した。
恐らく落ち込んでいるに違いない。そこで彼はホテルの部屋にオイストラフを招き、ロシアから持ってきていたウォッカをふるまった。
失敗については、知らぬふりをして慰めようとしたのです。
ところが、オイストラフの様子がおかしい。少しも落ち込んでいない。むしろ大変ご機嫌です。
ウォッカを一本空けたところで、ロストロポーヴィチはついに黙っていることができなくなりました。
「実は放送を聴いていた。あんなことをしでかしたのに、どうしてそんなに上機嫌でいられるのだ?」こう不思議がるロストロポーヴィチにオイストラフは言った。
「第一楽章は見事にやった。第二楽章も立派にこなした。第三楽章に入ったところで、例の美人洋服店主がどこに座っているか気になり出して、楽譜がすっとんでしまった。しかし考えてみろ。第三楽章は失敗したが、ひょっとしたら第一楽章も第二楽章も失敗していたかも知れないのに、二つの楽章は見事にやった。何で一つの失敗で落ち込むことがあろうか。」
ロストロポーヴィチはこの思考方法を「オイストラフの哲学」と呼んだ。
●私はこの「オイストラフの哲学」の思考方法を実践したいと考えております。
この考え方はなんとなく「勇気」が湧き出るような気がします。
「楽観主義」かも知れませんが、私は「前向思考」と考えています。
人生のあらゆる局面でこのような考え方ができれば、人生あまり悲観的にならずに過ごすことができるのでは?と思います。
なお、上記の文は、NHKモスクワ支局長を長年勤められた、小林和男 (こばやし かずお) 氏の「白兎(しろうさぎ)で知るロシア」を参考にしました。
一度ロシアを訪問したいと考えております。
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